本作は、人気小説「戯言シリーズ」のキャラクターである殺人鬼・零崎人識くんを主人公にしたモノです。彼を中心に、兄、友人、妹など、一冊ごとに関係者との人間関係を掘り下げています。これはそのうち、奇妙な友情で繋がった、匂宮出夢とのある事件、そして決別までを描いた一冊です。
物語は、出夢くん視点で進みます。出夢くんは、とても複雑な人物です。
身体は女性ですが、人格は男性。そして身体の中にもう一人、妹・理澄ちゃんの人格が同居しています。性格は好戦的で好色、そして妹想い。職業は殺し屋。
そんな彼女(彼?)が、面白そうだと軽い気持ちで接触したのが、殺人鬼の人識くん。二人は何度も戦い、時には共闘し、親密さを深めていきます。
そして今回、ある難解な任務の為に人識くんに助けを求め、彼は快く引き受けます。
嬉しさを感じるものの、そんな自分に驚く出夢くん。
いつの間にか、人識くんがかけがえの無い存在になっていたことに気付きます。それは、ただ一人の妹への裏切り。変化の証。そして、自分自身の避けられない弱体化へと繋がっていました。ある人物の言葉から、出夢くんは、人識との最悪の決別を決意します。それは、仄かな恋心や、友情との決別。
人識くんが抱いていたのは友情かもしれませんが、恐らく出夢くんの中には、相手への恋心がありました。
切なく辛い、終盤の二人のやり取り。しかし、殺人鬼と殺し屋にはある意味、相応しい終わりだったかもしれません。
その後の人識くんを作った、重要なエピソードです。