『おばちゃまは香港スパイ』は主人公の夫婦愛がスパイスになっている作品


『おばちゃまは香港スパイ』は、ドロシー・ギルマンによる「ミセス・ポリファックス・シリーズ」の1冊で、時間的には『おばちゃまはシルクロード』の後になる作品です。

すでにスパイとしての経歴が長くなり始めたミセス・ポリファックスがテロリストに捕まり、拷問を受けます。そのミセス・ポリファックスを救出したのは、夫のサイルスです。

シリーズの他の作品との違いは、ミセス・ポリファックスが痛恨の失敗をして、拷問を受けるという羽目に陥ることです。任務中に危機に瀕することがあるとは言っても、すでに初老に近づいたミセス・ポリファックスにとって拷問を受けるというのは大きな負の体験でした。生還したからこそ、彼女は自分が特異な心理状態になったことを、後日まで記憶に留めることになります。

生還を果たしたことが実感できるようになった時、ミセス・ポリファックスは夫のサイルスを感慨深く見つめ、この人こそ、全てを分かち合う人だと思います。ミセス・ポリファックスにとって、初婚の相手がどんな存在だったのかは、今ひとつつかめませんが、彼女が成熟した大人の愛情を持った女性であり、その愛情を再婚相手のサイルスに注いでいることが分かります。『おばちゃまは香港スパイ』は、ミセス・ポリファックスと夫との夫婦愛がスパイスとなっている作品です。