漁港の肉子ちゃん


西加奈子著「漁港の肉子ちゃん」を読みました。

もともと作者のファンで、2015年に直木賞を受賞した「サラバ!」を読み感動し、それ以来彼女の紡ぎ出す物語にすっかり夢中になってしまいました。

今回の作品も大満足の素晴らしさでした。

自分の心の内を人に見せることをせず、上手く振る舞いその問題からずっと避けてきた主人公のキクりん。

その隣で、自分の醜いところも全部ひっくるめて堂々と明るく生きている肉子ちゃん。

そんな母親の肉子ちゃんをどこかとても恥ずかしく、だけど本当は羨ましくって仕方がないキクりんの気持ちが痛いほど伝わってきます。

クライマックスの100ページ、彼女のそれまで必死に隠してきたもう1人の自分が、ある事をキッカケに溢れ出していきます。

その姿は本当に美しく、愛おしく、この小説の一番好きだったシーンでもあります。

私自身の真ん中にある、キクりん寄りの自意識がどばどばと涙と共に出てきて止まりませんでした。

誰しもが、身の程以上に自分を美しく見せようとする部分を持っていると思います。

しかし本当は、人は自分の駄目なところを晒す事よりも、必死で隠そうとするその事の方が醜いのではないかと思います。

欠点も短所もありのままでいられることが一番美しいはずなのです。

「ありのまま」なんて口では簡単に言えますが、もしかしたら私たちの永遠のテーマな程、それは難しい問題なのだと思います。

いくら歳をとっても消えない、強めな自意識や劣等感。

ちゃんとした大人になりきれている大人なんていないですよね。

西さんの作品は、こういった自分の拭いきれない自意識と葛藤する物語が多く、きっと作者自身の人生のテーマなのではないかと感じます。

彼女の作品に触れると、私の中にも居座り続けている面倒くささが少しだけ肯定されている気がして、なんだか勇気が出るのです。

絶賛思春期の学生さんにも、思春期が終わらない大人にも、どんな方にも一度読んでみてほしい一冊です。